周南高校生写真大会2022密着レポート。「一瞬の記録が、一生の記憶だ。」
2022年10月29日(土)・30日(日)の2日間、「周南高校生写真大会2022」が開催されました。昨年に引き続き2回目となった今回は、周南地区とその近隣地区の高校から7チーム21名が参加。みずみずしい10代の感性がレンズ越しに捉えたワンシーンは、どれもキラリと光る個性と可能性があり、周南エリアへの愛が溢れるものばかりでした。
「周南高校生写真大会」とは?
「周南高校生写真大会」とは、周南エリアの高校生が、ふるさとの景色や魅力をカメラで切り取り、作品(組写真)にして発表する大会で、2021年にスタート。目的は、高校生によるまちの魅力の発見と、高校生たちのふるさとへの想いをより深めること。そして、高校生と参加者を応援する地域の皆さんが写真を通じた交流の創出を目指します。
■概要
●日程:2022年10月29日(土)・30日(日)
●スケジュール
[29日(土)]【セミナー・ワークショップ】
9:15~ 受付開始
9:30〜10:00 オリエンテーション
10:00〜12:00 JR徳山駅半径1kmエリア撮影
12:00〜13:00 昼食(高校生応援弁当)
13:00〜15:30 写真セミナーと組写真制作ワークショップ
※事前課題(それぞれの学校の半径1kmエリアのフィールドにてレンズ付きフィルムカメラで撮影)の写真を使用。
15:30〜17:30 組写真セレクト(午前中に撮影したもの)
17:30〜18:00 プリントおよび発表準備
18:00〜19:00 1日目作品発表
19:00〜19:30 作品パネル作成(2日目に駅前図書館内展示)
[30日(日)]【大会本番】
8:45~ 受付開始
9:00〜9:15 オリエンテーション
9:15〜11:30 JR徳山駅半径1kmエリア撮影
11:30〜12:30 昼食(高校生応援弁当)
12:30〜15:00 組写真セレクト
15:00〜16:30 プレゼン準備・審査用写真プリント
16:30〜17:30 プレゼンテーション
===審査===
18:30〜18:45 結果発表・表彰式
■会場
撮影場所:JR徳山駅
写真セミナー・組写真セレクト会場:周南市立徳山駅前図書館 交流室
プレゼンテーション会場:周南市立徳山駅前図書館 インフォメーションスペース
■参加資格
周南エリアの高等学校から高校生3名でチームを編成し、応募。
■作品テーマ
心にとどめておきたい「ふるさとの風景」
■作品規定
①作品は4枚から10枚の組写真とする
②白黒・カラー不問
③画像データ(2Lサイズ比率、JPEG形式)にて提出
■プレゼンテーション
各チームとも作品のプレゼンテーションを行います(4分間目安)
■事前課題
心にとどめておきたい「学校の風景」
学校の半径1kmエリアをフィールドに、レンズ付きフィルムカメラ(27枚撮り、1チーム2〜3台)で撮影し、期限までにカメラを提出。
■審査員
初沢 亜利 さん(東京都在住)
第30回林忠彦賞、東川賞新人作家賞、日本写真協会新人賞、さがみはら写真新人奨励賞を受賞
▼初沢亜利さん Twitterアカウント
有田 順一 さん(周南市在住)
周南市美術博物館館長、林忠彦賞審査員。
▼周南市美術博物館公式ホームページ
原田 祐馬 さん(大阪市在住)
アートディレクター・デザイナー、名古屋芸術大学特別客員教授、グッドデザイン賞審査委員、UMA / design farm 代表
▼原田祐馬さん Twitterアカウント
■参加料
無料
■主催
周南市
■後援
朝日新聞社、毎日新聞社、読売新聞西部本社、中国新聞防長本社、山口新聞、
新周南新聞社、周南経済新聞、NHK山口放送局、KRY山口放送、tysテレビ山口、
yab山口朝日放送、㈱シティーケーブル周南、Kビジョン㈱、エフエム周南㈱メディアリンク(順不同)
■協力
カメラのワタナベ、株式会社ニコンイメージングジャパン、周南市立徳山駅前図書館
[1日目]・・・・・・・・・・・・・・・・
開会式&オリエンテーション
5つの高校から7チーム21名が参加。
10月29日(土)、朝8時過ぎ、やや緊張した面持ちで会場入りする高校生たち。受付を済ませ、開始時間を待つ高校生たちは、早速、写真やカメラの話題で盛り上がります。
9時半になり、開会式・オリエンテーションがスタート。まずは主催者による開会宣言が行われ、その後、今大会に出場する全7チームが紹介されました。
■南陽工業高校 チーム「Another」
「昨年も参加し、優秀賞をいただきました。今年は後輩チームが参加するのでプレッシャーもありますが、思いっきり楽しもうと思います」
■南陽工業高校 チーム「newルーキー」
「僕たちは1年生で初めての出場となります。プレッシャーもありますが、いい記録を残したいです」
■熊毛北高校 チーム「エイ」
「初めて出場します。カメラは初心者でほとんど経験がありませんが、頑張ります!」
■下松高校 チーム「みかん」
「去年も参加した2年生1人と、初めて参加する1年生2人のチームです。楽しむことを一番に考えて頑張りたいです」
■下松高校 チーム「ポテト」
「2年生2人と1年生1人です。この3人でチームを組むのは初めてですが、協力しながら頑張ります」
■下松工業高校 チーム「午後の紅茶」
「全員1年生のチームで、初めての出場です。楽しむことも忘れずに、納得のいく作品作りをしたいです」
■防府高校 チーム「ひとくちルマンド」
「初めて参加します。ノリと勢いで楽しみたいと思います」
■下松高校 チーム「STAR☆」(オブザーバー参加)
「オブザーバーとして参加します。大会を盛り上げていきたいです」
参加チームの紹介とそれぞれから意気込みを発表してもらった後は、大会期間中、高校生たちをサポートするスタッフと、運営に携わるスタッフの紹介があり、その後は、今回の審査員長を務める写真家・初沢亜利さんの挨拶へと続きます。
■初沢さんコメント
「このまちのさまざまな表情を皆さんの写真を通じて発見したい、知りたいです。今日、明日ともに2時間ずつという限られた時間ではありますが、できるだけ対象物に寄ったり、引いたり(離れたり)とバリエーションをつけて撮ってもらえるといいなと思います。そして、ぜひ『撮らせてください!』とまちの人々に声をかけ、積極的にコミュニケーションを図ってみてください。とにかく楽しむことを忘れずに取り組んでください」
JR徳山駅半径1kmエリア撮影スタート!
各チームが一斉に会場を飛び出します
「撮影スタートです!」の声とともに、高校生たちはカメラを持って会場からまちへと飛び出していきます。基本的に撮影機材、使用メディアは参加者自身が準備しますが、今回は、株式会社ニコンイメージングジャパンの協力により、希望する高校生には撮影機材の貸し出しが行われました。
「どこに行く?」「あの人に声をかけてみよう!」、高校生たちは好奇心のままJR徳山駅周辺を撮影して回ります。
チーム「みかん」は、創業50年の老舗「水木菓子舗」で撮影。店の歴史や和菓子の種類、菓子作りの技術など、店主から話を聞きながらシャッターを切ります。チーム「午後の紅茶」は、「自然を切り取りたい」と児玉神社を目指し、チーム「NEWルーキー」は、商店街のレンタルボックス店でまちの人々の声を聞きます。チーム「STAR☆」は、駅前商店街の呉服店で撮影。
撮影時間を終え、会場へと戻ってきた高校生たちに感想を聞いてみました。
■南陽工業高校 チーム「Another」
「初日はとにかく楽しみました。自分たちが楽しむことをテーマにしていたので、硬くならずリラックスして撮れたと思います」
■熊毛北高校 チーム「エイ」
「地元のいいところをもっとみんなに伝えたいと参加を決めました。周南といえばやっぱり港かなと思ったので、海でたくさん撮影してきました」
1日目の昼食は地元野菜ソムリエ監修の
周南のおいしいが詰まったお弁当
写真セミナーとワークショップの前に昼食をいただきます。1日目の昼食は、周南市の道の駅「ソレーネ周南」自慢のお弁当「夜市のごぼうコロッケ弁当」地元の野菜ソムリエ 西川満希子さんが監修したこのお弁当には、しゅうなんブランドにも認定されている周南市夜市地区のごぼうを使ったコロッケや周南市のブランド豚である鹿野高原豚のハンバーグなど、周南のおいしいが満載。西川さんオリジナルの「ヤサイコトバおみくじ」も付いていて、おみくじでも高校生たちは盛り上がっていました。
セミナーで学ぶ「組写真」ワークショップで作品作りを体験!
昼食の後は、今大会の審査員長を務める初沢さんによる写真セミナーとワークショップが行われました。
写真セミナーでは、初沢さんが自身の写真を例に、組写真について解説してくれました。「まずは撮る。どんどん撮ってみて、それを組み合わせていく。自由に撮って、その上でどう組み立てると、どんな流れができるのかを考えればやりやすいはず」と初沢さん。
ワークショップでは、高校生たちが事前課題として、レンズ付きフィルムカメラで撮影してきた自分たちの学校の風景の写真を1チームずつテーブルに並べ、初沢さんと一緒に写真を選んでストーリーを作っていきました。
「正解はありません。その組写真を見て、どう感じるかは見る人の自由。それが組写真の魅力」という初沢さんの言葉を参考に高校生たちは自分たちで組み立てていきます。
▼参加者たちが写した学校の風景の組み写真は、こちらから
1日目の写真を使って組写真づくりに挑戦!
写真セミナーとワークショップでの学びを生かし、1日目の午前中に撮影した写真を選んで組写真にしていきます。その後、完成した写真について1チームずつプレゼンテーションを行なって、この日は終了。明日の本番に備え、解散となりました。
[2日目]・・・・・・・・・・・・・・・・
いよいよ大会本番!午前中は、ふるさとの風景を撮影!
10月30日(日)、JR徳山駅の屋上庭園での記念撮影とオリエンテーションから2日目がスタートしました。この日の時間制限は2時間で、JR徳山駅半径1kmエリアを撮影します。
■熊毛北高校 チーム「エイ」
「今日は『働く人』をテーマにめぐる予定です。徳山港付近で漁師さんや船長さんの表情を押さえたいです」
■防府高校 チーム「ひとくちルマンド」
「昨日作った組写真のテーマを膨らませて撮ろうと思います。ワークショップがヒントになりました」
■南陽工業高校 チーム「newルーキー」
「初沢さんからアドバイスしていただいた、寄りと引きを今日は意識したいです。昨日は気楽に撮れていましたが、今日は少しだけプレッシャーを感じています」
それぞれの想いを胸に、いよいよ、撮影スタートです!
1日目と同じく2時間で同じエリアを撮影。
でも、まちの風景は少し違う…?!
2日目は日曜日とあり、商店街はお休みの店が多く、1日目とは違った雰囲気に。中には、「昨日とまちの風景が少し違う…」と焦りを感じるチームも。そして、駅前ではハロウィンイベントが開催され、コスプレを楽しむ人たちがいっぱい。「テーマをハロウィンに変えた方がいいのだろうか」と悩むチームもありました。
下松高校チーム「みかん」、チーム「ポテト」はともに商店街へ、熊毛北高校チーム「エイ」と南陽工業高校チーム「Another」は港方面へ、防府高校チーム「ひとくちルマンド」は山口県総合庁舎へと、各チームそれぞれ撮影場所へ向かいます。
港に到着したチーム「エイ」は、ベンチでくつろぐまちの人々やふいに現れた猫に向かってシャッターを切ります。
チーム「エイ」が次のポイントへと移動した後に港に到着した南陽工業高校チーム「NEWルーキー」は、停泊する漁船の船長に声をかけ、なんと船上にて撮影!
商店街に向かった下松高校チーム「みかん」は、まちの人々を探して歩きます。
そうして2時間後、撮影を終えた高校生たちは、会場に戻ってきました。満足そうな表情の高校生もいれば、不安な顔をした高校生もいます。それぞれの想いを胸に、午後からの組写真作りに挑みます。
でもその前に、2日目の昼食です!
2日目の昼食も周南の幸がいっぱい!
心がほっこりと温まる高校生応援弁当が登場。
2日目の昼食は、JR徳山駅近くの人気店「ほっこりカフェ」の「鶏肉と地元野菜のトマト煮込み弁当」です。「高校生を応援したい!」との気持ちが込められた地元野菜をたっぷり使ったヘルシー弁当には、クラッカーと一緒に味わうカボチャのサラダもあり、ハロウィンを意識した粋な演出も忘れていません。心が込められたお弁当を堪能したら、いよいよ組写真づくりです。
一枚一枚を真剣に見つめる高校生。
それぞれの想いが交錯します。
昼食後、各チーム1台ずつパソコンを使い、画面上で画像データを一枚一枚チェックし、まずは作品を構成するための写真を選んでいきます。
「自分の写真が少ない」「同じような写真ばかり」「全体的に色味が一緒」…など、チームのメンバーで撮った膨大の写真の中から数枚を選ぶため、いろいろな想いが交錯します。
■下松高校 チーム「みかん」
「今日はすごく迷いながら撮影しました。でも撮っているうちに、これまでこの商店街を守ってきた人や、商店街の人が見ている風景などを撮りたいと思うようになった。諦めずに最後まで撮りきりました」
■下松工業高校 チーム「午後の紅茶」
「全員1年生だったので本当に手探りでした。でも団結力があったと思う。みんなで力を合わせて撮った写真だから、いい作品に仕上げたいです」
■防府高校 チーム「ひとくちルマンド」
「撮影の途中、意見がぶつかることもあったけど、良い写真が撮れたと思う。途中から、テーマに縛られず自由に撮ることにしたが、3人の写真をバランスよく使うのは難しい。でも、そんな中でも自分の好きな風景を撮ることができました」
写真を選び終えたチームから、JR徳山駅近くの老舗カメラショップ「カメラのワタナベ」に向かい、2Lサイズでプリントを行います。当初、4〜6枚の写真で組み立てる予定でしたが、途中から上限を10枚に変更。それぞれの想いを形にしてあげたいという初沢先生からの提案でした。
仕上がった写真をテーブルに並べ、最終的な作品にしていきます。「こっちの方が先」「これは一番最後にしよう」など、どのチームも思いのほかまとまらず苦戦している様子でした。ようやく組写真が完成したら、それぞれタイトルとチーム名を報告し、今度はプレゼンテーションの準備です。限られた時間の中で作品を作り上げる難しさを、高校生たちは学んだようです。
集大成のプレゼンテーション。
組写真に込めた想いを言葉に…
16時半、プレゼンテーションの時間となり、高校生たちはJR徳山駅前図書館インフォメーションスペースに集まりました。
まずは審査員からのコメントをいただきます。
■原田 祐馬 さん
「プレゼンテーションを楽しみにしています。緊張するかと思いますが、元気よく、楽しくやってもらえたらと思います」
■有田 順一 さん
「皆さんの素晴らしい作品に出会えることを期待しています」
■初沢 亜利 さん
「2日間お疲れ様でした。充実した2日間になったんじゃないかと思います。その締めくくりが今からのプレゼンですから、急いで文章をスマホなどにメモして来られたでしょうが、あまり下を向かず、元気に皆さんに気持ちが届くようなプレゼンを行なってください」
審査員の言葉に真剣に耳を傾ける高校生たちは、この2日間で一番の緊張した表情を見せます。さあ、いよいよプレゼンテーションです。ここからは、各チームのプレゼンテーションの内容を簡単にご紹介します。
今大会の集大成!
ドキドキのプレゼンテーション!
■下松高校(オブザーバー)チーム「STAR☆」
タイトル:「繋(つなぐ)」
「私たち高校生には、あまり馴染みのなくなってしまった着物。着物という日本の伝統工芸品を今の若者やこれからの世代の方に伝えるために頑張っている人に出会い、私たちにとって着物というものが少しだけ身近になった気がします」
・・・・・
【講評】
原田さん:着物の色が目に飛び込んでくるような作品。手入れをする場面の写真で、手を加え続けないといけないことに興味を持ったんだろうなと思った。二人の興味がちゃんと写真に表現されていると感じた。
有田さん:「手入れ」という一つの観点と「日本人独特の色」がいい具合に融和され、「繋」という感覚がよく表現されている。店主の動きがよくわかる写真も入っており、流れ的にもすごくキレイに見えた。
初沢さん:さすが全8チームの中で一番経験があるチーム。写真のこともよく理解しているし、ピントの浅い・深い、それによって出せる効果もよくわかっている。一番技術レベルは高いが、写真が上手くなった後の難しさが感じられる。なんとなくカチッとして、何を感じたのかが写真に写らなくなってしまっている。もう少し感情が込められたら、この落ち着きから解放されると思う。
■南陽工業高校 チーム「Another」
タイトル:「これが!オレたちの!イマジナリーダイバーシティだ!」
「周南を撮るにあたり、『記憶に残したい』という想いを最優先し、自分たちが楽しい時の記憶が一番残ると思ったので、何より楽しむことを大切に撮影をしました。結果、いろんなところでふざけてきましたが、徳山のまちの人は受け入れてくださり、まちの温かさを感じることもできた。ダイバーシティ(多様性)を、性別や思想だとかだけじゃなく、「みんなが自由に自分のしたいことができること」と解釈し、それは僕たちの想像するダイバーシティということで、『オレたちの』と付けてタイトルにしました」
・・・・・
【講評】
有田さん:「楽しいこと」が全面に表現されており、自分たちの世界を自分たちで考えて撮ったんだなと感じた。物語を設定し、それに対してどういう写真、どういうポーズで撮影しようというところまで、よくこの短期間でまとめたと思う。
初沢さん:昨日の作品、今日の作品と一貫しており、「これが俺たちだ!」という写真。それが他のチームとの差別化につながり、成功している。ただふざけているだけではないのがちゃんと伝わる作品。展開も全体的に動きがあるのもいい。
原田さん:「ふざけました」と堂々と言えるっていいなとプレゼンを聞いて思った。自分たちがやってみたいことを先に決めて撮影してたんだな、というのを今のプレゼンを聞いて改めて思った。選定の中で「並び」につまずいたように感じた。次回はやりたいことを決めて、ストーリーを組み立ててから撮ってみてほしい。そうすれば皆さんの個性がもっとうまく噛み合うはず。
■下松工業高校 チーム名「午後の紅茶」
タイトル:「故郷(ふるさと)の誘惑」
「主に港に行って組写真を作りました。鳩に餌やりする子どもたちという平和な周南の日常から始まり、『この先には何があるのだろう』とワクワク感をもたらす奥行きのある道の写真、鳩が人間のように海を眺めている写真などを7枚を挟み、最後は電話ボックスで電話するメンバーの写真で、『どんなことを話しているのか』と見る人の想像がを掻き立てる終わり方にしました。一枚一枚、『見る人が考える』シーンを綴り、作品を完成させました」
・・・・・
【講評】
初沢さん:昨日は基本的に人を入れない写真で構成していたが、今日は打って変わってかなり人情味溢れる形に変化させ、バリエーションをつけてきたなと感じた。温かみがあるのに、何度も見返したくなる抽象的な作品。もしかしたら、一番見る側にとって難易度の高い作品かもしれない。昨日の「片道の風景」、今日の「故郷の誘惑」と、タイトルは2日間とも一等賞。
原田さん:タイトルが不思議。どういうところが「故郷の誘惑」なんだろうと思ったが、それが初沢先生が言われた「抽象的」につながるのかなと理解した。いろんな目線があると感じた。例えば、低いアングルだと、「鳩の目線なのかな」と考えさせられるような写真がたくさんあった。
有田さん:写真が一つずつかなり独立していると感じた。縦位置の写真が入っていたが、組写真は流れが大切。最後に尻はねで持ってくるか、真ん中で抑揚をつけるかなど、そういう考え方が大事。説明を聞いて大体の意味を把握し、最後は夢があるような感じで終わらせたとわかり、素晴らしいと感じた。
■下松高校 チーム「ポテト」
タイトル:「温輪」
「多彩な子どもたちの表情を切り取ることで、子どもたちが素直な心情を表すことができる温かい周南のまちを表現しました。たくさんの人たちが突然声をかけた私たちを受け入れてくださり、撮影にも快く協力してくださったおかげで、楽しく撮影できました。カメラを向けたら喜んで走ってくる子、カメラを向けたら恥ずかしがって隠れてしまう子など、さまざまな子がいましたが、子どもたちはみんなそれぞれの自分らしさを表現していました。周南の愛を受けた子どもたちは、愛の溢れる大人になっていくのだろうと思いました」
・・・・・
【講評】
原田さん:印象的だったのは、一緒に遊んでいる感覚が写真に表れていること。皆さんが子どもたちに接するときの態度が、ちゃんと写真に出ていると思う。無数の写真、しかもいろんな表情の中から選んでいくプロセスが3人にとっていい経験になったと思う。
有田さん:子どもはただ写すだけでも、「平和」や「温かい」といった印象を持っている。何枚か泣きそうな子どもの表情を入れるなど、昨日、今日でここまで描けているということが素晴らしい。周南の温かいところがよく表現されている。
初沢さん:昨日からの流れで、膨らませる形での作品。それが非常によく、いい結果を生んだ。子どもをテーマにするのは一番難しい。楽しいだけではなく、子どもの喜怒哀楽をしっかり捉えたと思う。笑顔の写真はたくさんあったと思うが、その中からしっかりと選んでよくまとめ上げた。クオリティの高い作品。
■防府高校 チーム「ひとくちルマンド」
タイトル:「拝啓」
「組写真の中に、手紙を書く人と届ける人が写っています。特に手紙を書く人の方に焦点をあて、つながりや伝えたい気持ちなどを表現したくて『拝啓』というタイトルをつけました。今はSNSで送ればすぐ届く時代ですが、写真を撮っていくうちに改めて手紙の温かさを感じました。当初、昨日のテーマ『憧れの彼女』で引き続き作品を作ろうと思っていましが、その型に囚われすぎて、写真を選定するときにつながりに悩んだり、意見が対立してしまいました。初沢先生から『昨日の作品は忘れてみたら?』とアドバイスをいただき、もう一度写真を見返したことで完成した作品です」
・・・・・
【講評】
有田さん:組写真は全体で自分が伝えたいものを伝えていく形態の発表方法。この作品の考え方、構想はある意味映画にもなるような壮大なもの。骨格はしっかりしているので、もうちょっと主観を入れれば、もっといい作品に仕上がる。
初沢さん:よく付け焼き刃でここまでまとめ上げたなと驚いた。こんなプランは全くなかったはずなのに、方向転換した瞬間に一つの言葉も含めて説得力のある作品になったかのように見える。ただやはり苦し紛れに選んだため、ちょっと足りないかなという印象。自分としては、できれば昨日のタイトルでその先を見たかった。
原田さん:映画のシナリオのようなプレゼンテーションだったが、それと写真の息が合っているのかが気になった。自分たちの良さを自分たちで見つけることの難しさを今回のチャレンジで学んだと思う。プレゼンや撮影を繰り返し続けていくことで発見できることも多いので、これからもっともっと挑戦してほしい。
■下松高校 チーム名「みかん」
タイトル:「歩み」
「閑静な商店街にシャッターを開ける音が響き、私たちは開店直後のお店を訪ねることにしました。そこで一人のおじいさんに出会い、おじいさんのこれまでの人生について語っていただくことになりました。ほか、親子で一緒に買い物をしたり、孫と散歩をしたり、家に帰ってくる人を迎えたり、この商店街にはさまざまな人生、人々の温かい瞬間が詰まっていました。静かな商店街には人々に温かな光があたる場所があり、ここがいつでも帰ってこれる場所であることを感じました。そこで、私たちの写真のコンセプトを『このまちと生きる』と決め、この作品を作りました」
・・・・・
【講評】
初沢さん:僕が想像していた以上によかった。正直、「やられたな」と思った。アップのおじいさんの写真が核になって、その前後に引きの写真、しかも、すごくキレイに光が当たっている写真。構図もすごくいい。トリミングはできないので、撮る段階でしっかりイメージできてシャッターを押せているのがすごい。技術だけではなくて、写真というものへの深い理解とセンスを感じた。
原田さん:ストーリーの組み立てがしっかり伝わってくる構成。きっとしっかりとインタビューして、この人のこの言葉が写真に表れるといいなっていう3人の気持ちがすごくこもっているのだろうと思った。アップのおじいさんのメガネに蛍光灯が写り込み、目は見えないが表情はちゃんと伝わるこの一枚がすごくいい。選び方も素晴らしい。
有田さん:プレゼンを聞き、今の高校生はこのレベルの作品が作れるのかとびっくりした。両者(初沢氏と原田氏)が色々言われていたが、コンセプトは最高レベル。感覚的なところにどんな映像を当てはめていくか、というのがちゃんとできている。手だけで人生を表すような写真もいい。いい意味でびっくりした作品。
■熊毛北高校 チーム「エイ」
タイトル:「人生」
「私たちは楽しくこの2日間を過ごしました。写真を撮る楽しさや難しさを感じ、自分たちの写真で誰かに何かを伝えることができるんだと学びました。3人で徳山を歩いて、自分たちだけではなく、いろんなものがともに生きていることを実感しました。生きていくんだったら楽しく生きたい、一瞬一瞬の出来事を大切に生きていきたいと思います。」
・・・・・
【講評】
原田さん:タイトルに対して、写真の構成をすごく考えて撮影しているんだなと、プレゼンを聞いてさらに理解が深まりました。「こういう写真が撮れたらいいな」と挑戦した写真が数枚入っているのでは? その数枚の写真の入り方が全体の組写真の中で非常によく効いているように感じた。
有田さん:プレゼンを聞いて深いコンセプトだと感じた。いろんなアングルの写真があって、水中の中のエイも生命体だし、この場所にも人生があるしと、小さなところまでしっかりと目を凝らしている。わずかな時間の中でよくここまでできたと思う。
初沢さん:皆さんが一番初心者に近い方々なので、この2日間、とても充実し、そして、疲れたのでは? 昨日はビギナーらしい清々しさ、勢いのある写真。今日はその勢いのまま行けたらいいなと思っていたが、写真の難しさの壁にぶち当たってしまった。他のチームも見ていたが、おそらくあなたたちが一番悩んでいたはず。特に写真のセレクトでは2つの方向性が見えてきていたが、最終的には崩して、20分くらいで考え直して決めていた。よくここまで持ってこれたと思うし、写真の難しさを知った1日になったと思う。めげない姿を見て、これから先も真剣に取り組んでいくんだろうな、成長していくんだろうなと思った。
■南陽工業高校 チーム「newルーキー」
タイトル:「さみしくても」
「港と聞くと釣りをしたりとかフェリーに乗ってどこかに行くとか、そういう楽しいことが思い浮かんでいたんですが、いざ港を撮ってみると、少し港の中でも寂しいなって感じる部分とか、ちょっと静かだなって感じる部分とか、冷たいなって感じる部分とかあって、でもその中にも美しかったり、温かい感じがあったのでそれを写真に表現しました。とても優しい漁師さんたちもいましたが、あえてこういう寂しいような感じの写真を選ぶことで何か感じるものがあるかなと思い、この作品に仕上げました」
・・・・・
【講評】
有田さん:「寂しい」で統一して構成されたと思うが、寂しさの中にもやっぱり将来の展望があるような、生活があるような、そういうところが描かれているんじゃないかと思った。フェリーの真っ赤な写真があるが、通常、赤は暖色で、どちらかといえば陽気だとか、温かいだとかそちらのイメージになるが、その割には寂しさがあり、直感的に思うものの逆を捉えられているなと思った。
初沢さん:昨日の写真も今日の前半の写真も、かなり取り止めがない感じだったが、「寂しさ」という点に気づいてまとめ上げることができたのは大きな収穫だと思う。「寂しい」ではなく、「さみしくても」っていうタイトルもよく思いついたなと思った。「さみしくても」になることで、寂しさの先にあるものを連想させるし、さまざまな情緒が盛り込まれていることを想像させる。本当にタイトルって大事だなと思わされた。見方によってはまとまりのないように見えるが、このタイトルによってストーリーができた。言葉一つで写真がここまでまとまって見えるというのは面白い。ここも含めて力。
原田さん:すごくたくさんの写真の中から悩んでいる姿を見て、どんなふうにまとめ上げるのかなと思っていた。特にタイトルを「さみしくても」にしたことで、その中にある自然と感じ取っていた温かさとか美しさみたいなものが言語化されてうまく編集されている。最後の最後まで悩んでいたと思うが、いい作品になった。
全8チームのプレゼンテーションが終わり、ここから審査員は別会場に移動し、審査をスタート。審査員3名で1チームごとに作品を囲み、じっくりと眺めて意見を交わします。
ドキドキの結果発表まであと少し。高校生たちは緊張の面持ちでその時を待ちます。さて、結果はどうなるのでしょう…?
2日間、必死に走り抜けた高校生たち。
優勝はどのチームの手に…?
19時、ついに結果発表の時間を迎えました。本来なら優勝、準優勝、優秀賞の3つの賞となるはずでしたが、今回は審査員3名の意見が一致し、急遽「敢闘賞」を設けることに。それでは、結果をどうぞ!
敢闘賞
■熊毛北高校 チーム「エイ」
タイトル:「人生」
【プレゼンター 初沢さんコメント】
「3人とも1年生で、お二人がほぼ写真を初めて撮るような状況の中で、昨日はすごく勢いがあって楽しそうで、今日は壁にぶち当たって悩んで。そんな中でもすごくセンスのいい写真があって、組写真という作品を作り上げることができた。来年、再来年とまだまだ伸びていってほしい。ぜひ写真を撮り続けてください」
【受賞コメント】
「急遽決まった敢闘賞をいただけるなんて思っていなかった。初めての大会なのに賞が貰えて本当に嬉しい。2日間すごく楽しかった」
優秀賞
■南陽工業高校 チーム「Another」
タイトル:「これが!オレたちの!イマジナリーダイバーシティだ!」
【プレゼンター 原田さんコメント】
「非常に皆さんの個性がそのまま写真に出ている作品。特に、皆さんが日頃見ている漫画やSNS、YouTubeなどそういうものの影響がすごく写真に出ていて、自分たちの暮らしと写真が一体となっているような非常に面白い作品になっていた」
【受賞コメント】
「昨年度も大会に出場し、その時も優秀賞。ちょっとだけ悔しい結果だが、2年連続で賞をいただけたことは嬉しい。3人で喜びたいと思う」
準優勝
■下松工業高校 チーム「午後の紅茶」
タイトル:「故郷(ふるさと)の誘惑」
【プレゼンター 有田さんコメント】
「紙焼きした状態で改めて写真を見ると、さらに深みが感じられた。すごく抽象的で考えさせられる、『何度も見返したくなる作品』ということで、審査員3名の意見が一致した。本当に頑張った作品だと思います」
【受賞コメント】
「今回の大会がほぼ初めてに近い経験で、不安と焦りもありながらの参加だった。3人で色々考えたり、試行錯誤した経験は本当に貴重なものとなり、楽しかった。とてもいい2日間になった」
優勝
■下松高校 チーム「みかん」
タイトル:「歩み」
【プレゼンター 初沢さんコメント】
「満場一致の優勝でした。昨日の作品だとベスト3にも入ってなかった。切り替えて本当によくやったと思う。編集力も技術力も非常に高く、『見せつけてやる』、『ねじ伏せてやる』という底力があった。これからももっともっと深めていってほしい」
【受賞コメント】
「昨日の評価があまり良くなかったので、2日間、特に2日目は迷いながら、悩みながらシャッターを切った。優勝できると思わなかったからすごく驚いている。この3人でチームを組んで本当に良かった。これからももっと写真を撮りたい!」
大会を終えて審査員3名の感想は?
■原田 祐馬 さん
「今日からの参加でしたが、昨日から皆さん明らかにアップデートされたんだろうなと今日の様子から感じた。皆さんの携帯の中にもすごい数の写真が入っていると思います。日常的に写真を撮ることはあっても発表する機会はない。今回、写真を発表すること、組写真という作品を作ることは非常にいい経験になったと思う。今後も写真を続けていってくれることを楽しみにしている。来年も頑張ってください」
■有田 順一 さん
「本当にいい写真を見ることができて、大変いい大会だったと思う。写真は自分だけで持っているんだったらただの記録。批判にもめげず発表し続けることが大切。そして、撮り続けることも重要で、そうやっていくうちに自分のものになっていく。このまちから写真家が誕生することを期待している」
■初沢 亜利 さん
「審査中、審査員3人で何度も写真の周りを回って時間をかけて相談しました。でも『この写真はちょっとないな』という写真は1枚もなかった。昨日の段階ではあったが、全てのチームがこの1日でレベルアップした。そして、2位以下はかなり迷いながら決めていった。皆さんが1日でものすごく成長する姿を見られたことは、写真を撮る者として本当に嬉しいし、ワクワクする2日間だった。2日間でこんなに学べるということがわかったと思うので、その都度現れる苦しさを乗り越えて、ぜひ続けていってほしい」
全てのプログラムを終了し、最後は参加者全員で記念撮影を行いました。高校生たちの写真にかける情熱が溢れた今大会。この2日間で、高校生たちは知らなかった周南市を知り、気づいていなかった魅力を発見し、まちの人々の温もりに触れることができたようです。そして、何より、より一層写真が面白くなったはず! 来年も高校生たちの眩しい姿に出会えることを祈っています。この2日間の想い出が高校時代の一生の想い出になるとうれしいです。
参加者の皆さん、スタッフの皆さん、お疲れさまでした!