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お好み焼きで、地域に笑顔と元気を届けたい!親子2代でUターン移住

お好み焼 やすきゅう  外山泰丸さん

1983年、東京都生まれ。父親のUターン起業に伴い、中学生のときに周南市へ移住。大学進学を機に東京へ。大学卒業後、外資系スーパーマーケットに就職し、青果部門を担当する。結婚して子どもを授かったことをきっかけに、周南市への移住を決意。地元のスーパーマーケットで働きながら、イベント時などの忙しい時期は家業を手伝う日々。仕事を辞めて本格的に家業を手伝い始めたのは2020年2月。2021年10月からは新たな取り組みとして周南市の中山間地域の須金や大谷(和田)などでの移動販売も開始。人とのつながりを大切にしながら、地域にお好み焼きを届けている。

職人技が詰まった熟練のお好み焼き

お店の外観

JR徳山駅から徒歩約10分。周南市の桜馬場通にある「お好み焼 やすきゅう」は、創業27年のお好み焼き店です。店名の「やすきゅう」は店主である外山泰久さんの名前をもじったもの。「お好み焼 やすきゅう」が地元で愛され続けている理由は、家族経営ならではのアットホームな雰囲気にあります。お店に入ると、泰久さんと息子の泰丸さんが人懐っこい笑顔で迎えてくれました。

(写真左)泰久さん (写真右)泰丸さん

ここで提供されるのは広島風のお好み焼き。泰久さんが広島の名店で手ほどき受けて辿り着いた味です。最大の特徴は、モチッとした食感の麺。水分量の調整を何度も繰り返し、市内にある製麺所に半年かけて開発してもらったそう。注文後に茹でることでモチモチとした食感が生まれます。ソースは4種類をブレンドしたオリジナル。コクのある甘さの中にスパイシーさも感じられます。ざく切りのキャベツは、生地でフタをして高温で一気に蒸し焼きに。こうすることで甘みが増してさらにおいしく仕上がるのだそう。

こだわりの麺
こだわりのキャベツ

鉄板の温度は、高いところで250℃、低いところで180℃。適温の場所を見定めて、生地を焼くところ、蒸し焼きにするところなど、使い分けているのだとか。まさに職人技です。ジュージューと湯気が立つ鉄板はライブ感満載! カウンター席で鮮やかなコテさばきを眺めながらしばし出来上がりを待ちます。

「おいしい!」の一言のため、親子で守り続ける味

おふたりの笑顔につられ、店内はいつもなごやか

何気ない会話のやりとりも隠し味。焼き上がるまでの時間が、お好み焼きをより一層おいしくしてくれます。ここで泰丸さんにお好み焼きの魅力を聞いてみました。
「お好みの具材を入れて楽しめるのがお好み焼きの醍醐味。正解はありません。だって“お好み”焼きなんですから。餅やキムチ、チーズなど、あれこれトッピングできるのも楽しみの一つ。ネギ一つにしても、中に入れるか、焼き上げてから上にかけるかは、お客様のお好み次第です。」
お好み焼き以外のサイドメニューも充実。定番商品のおいしさを守りつつ、新商品への飽くなき探究心も忘れません。プリプリのえびが入った『えびやすきゅう』、キャベツと豚を蒸した『むし豚しゃぶ』は、泰丸さんが考案した商品。お客様からの評判がことのほかよくて、そのままメニューとして定着したものです。

サイドメニューも充実

「当たり前のことですが、一枚一枚丁寧につくるように心掛けています。お客様から『おいしい』の一言を聞けたらそれだけで満足。どうやったらお客様に喜んでいただけるかを考えながら焼いています。」

もっと多くの人に知ってもらいたい!中山間地域での販売もスタート

テイクアウトはもちろんのこと、配達も行っている同店。1年前からは中山間地域への出店という新たな取り組みも始めています。
「店で焼いたお好み焼きを車に詰め込んで、定期的に須金(ふれあいプラザ須金)や大谷(やまびこ店)での移動販売を行っています。以前から、徳山夏祭りやサンフェスタしんなんようなどのイベントへの出店は行っていましたが、『お好み焼 やすきゅう』の看板を掲げて単独で販売するのは初めてのこと。最初は不安でしたが、地道に通い続けること1年。クチコミで評判が広がり、常連さんも増えてきました。月に2回しか通っていないのにちゃんと覚えていてくださっているんですよ。到着を待ちわびてくださるお客様もいらっしゃって、めちゃくちゃ感激しました。通い続けた甲斐がありましたね。」
今ではカレンダーの予定がぎっしり埋まるほど大忙し。山口県東部の岩国市の周東町りぼんマルシェ、高森天神祭・とおりゃんせご縁市など、周南市外のイベントに呼ばれる機会も増えています。

「これからも地域を盛り上げるお手伝いができればいいなと思っています!」
外山さん親子がつくるお好み焼きを囲んで、地域の交流が深まっていく…。今日もどんな出会いが生まれるか楽しみです。

お好み焼きに真剣です

インタビュー

父親と一緒に「お好み焼 やすきゅう」を営む外山泰丸さん。「根っから人を楽しませるのが好き」と語る泰丸さんに、これまでの道のりや現在の取り組み、周南市への想いなどを伺いました。

家業を手伝うことで食への興味関心が高まった

小学校を卒業するまで東京で過ごした外山泰丸さん。父の泰久さんは当時大手スーパーマーケットの青果部門で働いていましたが、38歳のときに周南市にUターン。泰久さんがお好み焼き屋を開店したのは、泰丸さんが中学生のときでした。
「父が焼くお好み焼きも好きでしたが、お客様がおいしそうに食べている様子を見るのも好きでした。」
人手が足りないときは、お客様にお水を出したり、配達に行ったりと、お店を手伝うことで食への興味が増していったそうです。
小学校の卒業時点で身長が175cmあったという泰丸さん。その体格の良さを生かして、中学生では柔道部に入部。高校時代には学年別体重別で県1位という輝かしい成績を残しました。
「いまだに当時の柔道仲間とは仲が良いんですよ。『テレビで見たよ』と言ってわざわざ会いに来てくれる友達もいるので嬉しいです。」
そして、大学進学を機に再び東京へ。卒業後、外資系スーパーマーケットに就職しました。
「青果部門を担当し、野菜や果物の品出し、陳列、パック詰めなどに追われる日々を過ごしました。青果部はお店の顔ともいえる部門。お客様を飽きさせないように、季節感あふれる売り場づくりに専念しました。そのときに得た野菜、果物の旬や素材に応じた調理法などの知識は、今に活かされています。」

子育てしやすい環境を求めて周南市へ

泰丸さんが周南市へのUターンを決意したのは30歳のとき。結婚して子どもを授かったことがきっかけでした。
「単純にお金を稼ぐだけであれば、東京で暮らし続けるという選択肢もありましたが、子どもを育てるとなると話は別です。どんな場所でどういう風に育てたいか、夫婦でとことん話し合いました。そして、辿りついた答えが周南市へのUターンでした。中学・高校時代を過ごしてきて馴染みがあったこと。田舎で子育てをした方が、より困難に立ち向かいやすく、これからの時代を生き抜く力が身につくだろうと考えたからです。」
何よりも家族との時間を大切にしたいと考えた泰丸さん。2018年に家族で周南市に移住しました。

学校帰りの子どもをお出迎え

Uターン後、地元のスーパーマーケットに就職した泰丸さんですが、イベントへの出店などで忙しい時期は、家業のお好み焼き屋を手伝うこともあったそうです。
「もともと地域のイベントに出店していたものの、父一人では忙しくて思うようにできない部分もありました。そこで、上司の許可をもらってお休みをいただき、店を手伝っていました。」
泰丸さんがスーパーマーケットの仕事を辞め、本格的にお店を手伝い始めたのは2020年の2月。ちょうど新型コロナウイルス感染症が蔓延し始めた頃でした。
「4月には緊急事態宣言が発令され通常営業ができない状況に。でも、逆にそれが良かったんです。普段できないような設備の掃除や整理が一気にできた上、徐々に仕事に慣れていくこともできました。今後の展開を考える上でも、ちょうどいいタイミングだったと思います。」

お店に来られない人のために、定期的に中山間地域に出店

泰丸さんが中山間地域でのお好み焼きの販売を始めたのは2021年10月から。きっかけは須金で開催されたなしぶどう祭りでした。
「知り合いに頼まれて、抽選会の当たりクジとして、うちの商品券を提供しました。ところが須金からうちの店までは片道およそ30km。車を持っていない方は、せっかく当たってもうちの店まで足を運ぶことすらできません。須金の人にもうちのお好み焼きの味を知ってもらえたら…。そう思って、月に2回、ふれあいプラザ須金にお好み焼きの配達を始めました。」
それまでもお祭りなどには出店していたものの、「お好み焼 やすきゅう」の看板を掲げて単独で活動するのは初めてのこと。しかも、来店の告知はふれあいプラザ須金と須金郵便局の2カ所だけ。最初は知る人も少なくて不安だったとか。それでも地道に通い続けること1年。クチコミで評判が広がり、徐々にお客様が増えていきました。
「嬉しいのは常連さんができたことです。月2回しか届けていないのに覚えてくださっていて、めちゃくちゃ感激しました。1年間通い続けた甲斐がありましたね。」
現在は、須金だけでなく大谷にもお好み焼きを定期的に届けているそう。周南市鹿野や岩国市からなど、他の地域からイベントに呼ばれる機会も増えました。
「こんなにあちこちからお声がかかるとは想像していませんでした。どこの地域にいっても、目の前のお客様が喜んでくださるのが一番。少しでも幸せな気分を味わってもらえればいいなと思っています。」

豊かな食生活に大満足!道路も快適そのもの!!

周南市に移住して改めて感じたのは「暮らしやすさ」だという泰丸さん。特に、食べ物は抜群においしいと感じているようです。
「周南市は海にも山にも近い。産地に近いという地理的なメリットは、かなり大きな魅力だと思います。特に魚を食べたときは感動しました! 衝撃を受けたのはアジやイワシなどの光り物。群を抜いておいしいですよね。また、東京に住んでいたとき梨はほとんど食べなかったんですけれど、須金の梨は別格。こんなにも味が違うのかと驚きました。食生活はとても豊かだと思います。」
普段何気なく見ていた風景が、実は特別なものであったことにも気づかされます。
「周南市に限らず、山口県は山間部も海沿いも道がきれい。どこに行ってもきちんと整備されていますよね。これってものすごい利点だと思います。永源山から大谷(和田)に抜ける山道は四季折々の表情が楽しめますし、室積から柳井に抜ける海沿いはデートコースになるくらい爽快です。須々万から下ってくるときに見える海や工業地帯も絶景。いずれも生活道路ですが、観光道路といってもいいくらいの美しさです。」

人とのつながり、当たり前を大切に

「人と気さくに話せるのも周南市のいいところ。挨拶をしたら挨拶が返ってくる。当たり前のことができるって、実はスゴいことなんだと思います。」
家族との関係を大切にできなければ、一緒に働くパートさんやお客様との関係もうまくいかない。全てつながっているというのが泰丸さんの持論です。
「自分が当たり前だと思っていることが、実は相手にとってはそうでないことも往々にしてあります。10人いれば10人の当たり前がある。最近、多様性という言葉をよく耳にしますが、自分が持っている多様性もあれば、相手が持っている多様性もあります。それを押しつけ合えばケンカになってしまいます。信頼関係は話し合いの中で生まれるもの。SNSで簡単につながれる時代だからこそ、人との対話を大切にしたいと思っています。」
 
人とのつながりを大切にしながら、お好み焼きを通じて周南市全体を元気にしていきたい。地域に根ざした「当たり前の存在」を目指して、今日もお好み焼きを届ける泰丸さん。次はあなたが住む地域に出店するかもしれません。ぜひSNSで出店先をチェックしてみてくださいね。

奥にある小上がりにはマンガがぎっしり。子連れでゆっくりと過ごすことも可能

お好み焼 やすきゅう
〒745-0011 山口県周南市桜馬場通2-15 ペルソネ桜馬場1F
TEL:0834-22-4777

▼Facebook

▼Instagram

https://instagram.com/yasu_q?igshid=YmMyMTA2M2Y=

招きマスコット人形?

記事:小野 理枝 / 写真:嶋畑 勤
執筆時期:2023年 2月
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